カーコーティングライフ

一九八〇年代までの航空輸送は、経済の成長およびそれに伴う所得の上昇という需要面での要因と、ジェット機や大型機の登場といった技術革新による供給面でのコスト低下要因によって、さほどの努力なしに急速な伸びを示してきた。
しかし、今後はその上のような需給両面での有利な外的要因は期待できない。
同時に、航空輸送が国家政策の道具として利用され、かつ、国家の保護を受けて成長してきた時代は終わりをつけ、世界的な規制緩和の流れと大競争時代の到来により、国の制度的な境界を超えた新たな枠組みの中で航空輸送をとらえるべき時代に入りつつある。
このような流れは、経営戦略の見直しを当然求めることとなるが、航空輸送のように規制下にある産業では、各企業が経営政策を見直そうと考えても、企業に対する政府の規制や空港政策が、時代の流れに対応して市場メカニズム重視の方向で改革されなければ、経営政策の改善は到底不可能であり、消費者利益の拡大も不可能である。
文しかしながら、日本の政府は方向としてはその方向を向いているとは言え、その進度は世界の趨勢に比べてかたつむりのように遅々としており、完全に遅れをとっている。
本書は、大競争時代の中にあって日本の航空(輸送)政策と空港政策を一日も早く市場メカニズムを最大限に活用した形に改革すべきことを訴えるものである。
本書では、現状についてはなるべく割愛し、筆者の論理展開に重点を置いた。
現状について詳しく知りたいと思う読者には、『数字でみる航空』(航空振興財団)、『エアポートーハンドブック』(関西空港調査会)を参照することをお薦めする。
本書でもこれらから図表を一部拝借して使わせて頂いている。
紙面を借りて謝意を表したい。
このところ幅広く社会問題・経済問題について、主として規制制度の面から研究している筆者であるが、研究のルーツは交通経済学であり、航空についての研究に最も大きなウェイトを置いていた時代もあった。
幸か不幸か一般的な規制の問題を論じた『規制破壊』(東洋経済新報社)が先に世にでたが、航空の本は筆者も書きたかった分野の一つである。
ただ、今回は新書でもあり、両教授にはもう少し本格的な書をものするまで待って頂き、今回は、筆者が航空についての研究を始めた時以来、様々な形でお世話になった左記の方々に本書を捧げたい。
近年の航空輸送の推移航空輸送市場では、戦後から一九七〇年代末まで、世界共通の現象として、経済発展による需要増と、ジェット化・大型化をはじめとする技術革新によるコスト低下によって、輸送量は大きな増加を示してきた。
このような中で、日本の航空会社は、一九九四年の実績で年間七四五四万人の国内線旅客とー六八万人の国際線旅客を運び、旅客キロ(旅客数に利用距離をかけた数値)では一九九三年にロシアを抜いて世界第三位に浮上した。
空港の数も、公共用飛行場だけで九五を数え、国内では二二〇を超える路線が張り巡らされ、国際線では六〇に近い航空会社が一週間に一七〇〇便あまりを飛ばして日本と世界をつないでいる。
日本に出入りする旅客数も三八八五万人に上るまでになった。
日本が敗戦後、航空輸送を再開してから半世紀、輸送量の点ではまさに世界に冠たる航空大国となったと言ってよいだろう。
しかし、八〇年代以降は、景気停滞と景気回復の繰り返しの中で、輸送量は漸増傾向に我が国航空企業(日本航空、全日本空輸、日本エアシステム、日本アジア航空及びエアーニッポン)による輸送実績である。
あり、今後も七〇年代までのような大幅な伸びは期待できない。
以下、市場別に航空輸送の現況をみてみよう。
国内航空旅客市場一九八六年六月の運輸政策審議会答申により、それまでの厳格な市場分割主義が廃され、以降、市場構造は若干の変化をみせたが、基本的には国内三社体制は変かっておらず、総ての定期航空輸送は、全日本空輸(ANA)、日本航空およびその子会社によって担当されている。
コミュータと呼ばれる不定期航空事業免許による小型機での定期的航空サービスも、離島などの一部に独立系事業者が存在するものの、大部分は三社の子会社による運航となっている。
旅客数は、全体としては漸増傾向にあるが、市場によって差異がみられる。
東京-札幌に代表される長距離海越え路線では、航空輸送が他の交通機関に比べて絶対的に強く、そのシェアは100%近くになっている。
それだけに航空需要はほぼ飽和に達しており、輸送量の伸びは経済成長の伸び如何に依存している。
東京・大阪と地方主要都市を結ぶ路線では、ジェット化がほぼ完了しており、ジェット化当初の七〇-八〇年代にみられた急激な伸びは現在ではみられない。
一方、新幹線の新規開業の影響による落ち込みも、近年では新幹線の新規開業が少ないことから、全体としての影響は小さくなっている。
したがって、これらのルートでは、今後の航空輸送量は経済成長とJRとの競争関係次第である。
ただし、これらの主要路線は、運賃体系や経営政策を工夫すれば需要の伸びが期待できるルートや、東京の空港制約が緩和されれば思い切った経営政策の導入が可能なルートが大部分である。
空港制約の無い地方都市間路線は現在開発中であり、輸送量の絶対量は少ないが伸び率は高い。
離島・辺地、特に遠隔地離島では対抗交通機関が無いに等しいことから、航空輸送の競争力は高いが、全体の需要規模自体が小さく、また人口も減少していること、さらに需要の十分な大きな離島については高速船の投入が近年増えてきていることから、かならずしも航空の市場環境は良好ではない。
国際定期航空については八六年の運輸政策審議会答申以降、日本航空およびその台湾路線ダミー子会社である日本アジア航空(JAA)の独占が排され、全日空と日本エアシステムも定期航空輸送に進出できるようになったが、日本航空のシェアが大きく減少するような変化はみられていない。
国内と同じく国際分野においても、三社系列以外の日本の航空会社の参入は四半世紀以上にわたってみられていない。
国際航空旅客も、世界全体で見た場合、世界経済全体のリセッションにより、一九七〇年代末から八〇年代初頭にかけて停滞がみられ、日本についても、八〇年には初めて日本人出国者数の前年比がマイナスとなった。
しかし、八一年以降日本人出国者数は再び増加に転じ、八二年には七九年の水準に回復し、その後、「テンーミリオン計画」の計画達成時期を待たずに1000万人を越えるまでに増加した。
また、入国外国人数は一貫して増加の趨勢を示している。
特にアジア諸国の順調な経済発展の影響を受けて、東南アジア地区からの入国者の伸びが高い点が心強く、地域別の航空輸送量を見ても、アジア地域の近年の伸び率は八%と他地域に比べて高い。
航空貨物は、旅客が漸増を示すようになった後も、対照的に高い伸び率を示してきた。
九〇年代に入って伸び率は低下したものの、依然有望な分野であることには変わりはない。
航空貨物は貨物輸送全体に占めるトン数のシェアはごく小さいが、航空化率(輸出入金額でみた航空のシェア)は年々高まっており、一九九四年には輸出品で二I%、輸入品で二四%に達した(ちなみに、一九七五年の数値は輸出品で六%、輸入品で七%)。
航空化率は付加価値の大きい商品で特に大きく、半導体電子部品、電子計測機器、ダイヤモンド、生きた動物では七割から九割に達している。
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